【個人的書評】ザリガニの鳴くところ
本屋さんの陳列棚で一目惚れして買った「ザリガニの鳴くところ」。
帯曰く、、、
- 「ハリウッド映画化決定!」
- 「2021年 本屋大賞 翻訳小説部門 第1位!」
翻訳小説はあまり読まないが、読み始めると翻訳だなあという表現、言い回しがおおく、感受性が磨かれたような気持ちに勝手になって不思議な高揚感に包まれていた。
【概要】
著者:ディーリア・オーエンズ
訳:友廣純
出版:早川書房
定価:1900円+税
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【あらすじ】
ノース・カロライナ州の湿地で男の遺体が発見された。人々は「湿地の少女」に疑いの目を向ける。6歳で家族に見捨てられた時から、カイアは湿地の小屋でたったひとり生きなければならなかった。読み書きを教えてくれた少年テイトに恋心を抱くが、彼は大学進学のため彼女の元を去っていく。以来、村の人々に「湿地の少女」と呼ばれ蔑まれながらも、彼女は生き物が自然のままに生きる「ザリガニの鳴くところ」へと思いをはせて静かに暮らしていた。しかしある時、村の裕福な青年チェイスが彼女に近づく・・・みずみずしい自然に抱かれて生きる少女の成長と不審死事件が絡み合い、思いもよらぬ結末へと物語が動き出す。
(ザリガニたちの鳴くところ)
【感想】
ポイント1. 少女の強さと人生、結末
切ない。とにかく切ない。ただ物語の結末にはなんとも言えない感情が溢れてくる。
何が正解で正義で誰もが幸せになれる選択なのだろうか。
物語の主人公「湿地の少女」ことカイアは、幼い頃から家族の選択に振り回され、大人になってからは周りの身勝手な男たち、偏見まみれの大人たちに振り回され、普通であれば孤独感でどうにかなってしまいそうなのに、彼女は湿地の自然、生物、動物たちと対話し癒され、強く生きていく。
その中で彼女は純粋さだけではなく、自ずと強かさも身につけたのでしょう。結末に衝撃を受け、彼女の人生を思って何故か号泣した私は、彼女の選択に同意してしまう。
ポイント2. 自然描写の素晴らしさ
著者は動物学の博士号を取得しているらしく、主人公が生きる湿地帯の動植物、自然の描写はとても豊かでリアル。この描写なくして、この物語の深みは出なかったのではと思う。あまりにも雄大すぎる自然があるからこそ、主人公カイアの孤独感は時に強調され、時に包み込まれていく。
カイアのような生活をしろと言われても、私には無理だと思うが、一度はその自然を感じてみたい。アメリカは大国で都会的な部分と、ノースカロライナのように今でも自然豊かなのどかな田舎である。今ももしかしたらアメリカにこのような手付かずの自然の中で暮らしている人がいるかもしれない。
【まとめ】
初めの方は先が読めずに退屈に感じるかもしれないが、徐々に物語に引き込まれていきます。500ページ超の大作ですが、この世界観に触れて、しばらく浸って欲しいと思います。
2021.11.23
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